赤川次郎 『上役のいない月曜日』 感想
| 上役のいない月曜日 (文春文庫) | |
![]() | 文藝春秋 2008-11-07 売り上げランキング : 309049 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
赤川さんの本を読むのは久しぶりだなあ。確か高校の時に読んでたのが最後だったはずなんで、かれこれ5年以上ぶりって計算。本格推理小説っていうジャンルにドップリ浸かっちゃったんで、推理小説一辺倒ではない彼の作品からは遠ざかってたというわけです。でも印象に残っている作品はやっぱりあって、覚えてるのが『一日だけの殺し屋』っていう短編と『やさしい季節』という彼にしては長めの前後編に分かれた青春小説。こちらも今後再読するかもしれません。
----上役のいない月曜日 あらすじ----
その日M文具株式会社では非常に珍しい事態が起きていた。各部署の管理職が全員休みを取っていたのだ。上司不在の安穏とした空気の中寛いで過ごそうとする社員達だが、『M文具を告発する会の会長』なる女性からの電話を皮切りに様々なトラブルが発生する。次から次に発生するトラブルに社員達が巻き込まれる表題作。
--------------------------------------
面白いけど印象薄い。次から次にトラブルが起こるのが見所なんでしょうが、人数多くて誰が誰やら混乱しちゃいました。日常的に起こりそうな話なので地味なのは仕方ないかな。
----花束のない送別会----
二階堂黎人×黒田研二 『永遠の館の殺人』 感想
| 永遠の館の殺人 (光文社文庫) | |
![]() | 光文社 2009-01-08 売り上げランキング : 340257 おすすめ平均 ![]() <破邪顕正>---作者にこそ言いたい 面白い!Amazonで詳しく見る by G-Tools |
----あらすじ----
一組のカップルは雪山で遭難し、凍死寸前のところで一軒の館を見つける。
しぶる主人を説得し何とか屋敷内に入る許可を貰うが、偶然滞在する事になった来客までをも巻き込んだ殺人事件が相次いで発生する。その上どの死体も少し目を離した隙にどこかへ消失してしまう。館に潜む殺人鬼の仕業なのか?強力タッグで仕掛ける大トリックが光る、キラーエックスシリーズ第三弾!!
---------------
例の如くネタバレ必至なので行を空けます。今後読む可能性が少しでもある方は見ないで下さい。
↓
一応完結作という事になるのかな?物語のキーパーソン『殺人鬼キラーエックス』はまだ自由の身なので、これからも事件が起きる事は間違いないでしょうが、その正体も大体は明らかになりました。娘がキラーエックスで、売春婦殺しは未来の話という真相はネタバレ寸前で気づきました。という事は館での殺人鬼はただのいかれた姉ちゃんだったって事?うーんそれはちょっと酷いかなあ。。それと娘に『死』という現実を知らせない動機が弱いかな。いくらなんでも死体を隠すなんて手間を掛けるくらいなんだから、もう少しきっちりした理由が欲しかった。後執事があそこまで必死に秘密を守ろうとする理由もね。確かに前の奥さんは死んだのではなく変身して今の姿になったのだ、という夢みたいな話を無理やり作り出しているという事実はとても狂っている行動ではありますが、殺人を犯してまで守ろうとするような秘密ですかね?しかも主人ではなく執事が。
でもまあお話自体が凄く面白かったので満足は満足です。まさか一番最初の殺人が主人公の手で行われたり、殺人鬼が真相を解明するなど、従来の推理小説では考えられない大胆な発想ですね。なので今回は叙述トリックよりはそういう意外なストーリー展開を楽しむ度合いの方が強かった気がします。意外と言えばラストも壮絶。七歳の少女が笑いながら拳銃を人に向けている姿は、想像しただけで身震いします。しかもただ狂っているっていうのではなく、少女自身はその人をある意味で生き返らせる為に、善の行動として取っているというのがまた恐ろしい。今後も続編が出る可能性はありそうですが、見たら文庫化されたのは今年の一月なんですね。新刊が出るとしてもまだまだ先の話になりそう。
西澤保彦 『七回死んだ男』 感想
| 七回死んだ男 (講談社文庫) | |
![]() | 講談社 1998-10 売り上げランキング : 5871 おすすめ平均 ![]() ミステリだが緊迫した感じはなく笑えた SFにロジックミステリを持ち込むと タイムトラベルとミステリーAmazonで詳しく見る by G-Tools |
----あらすじ----
同じ日を何度もやり直す『性質』を持ってしまった少年は、祖父が親戚の誰かに殺される一日を繰り返す事になる。何とか阻止しようと奮闘するが、繰り返すたびに事態は思わぬ方向へと進み、結局祖父は殺されてしまう。一日が確定してしまう前に解決策を見つけなければ祖父の命は元より、親戚から殺人者まで出してしまう事になる。奇抜な設定と見る者を離さない巧みな構成の変り種本格推理小説!!
---------------
ぶっちゃけかなり面白いですよこれ。あらすじからして変わった話であるのは読む前から丸分かりなのでかなり期待して読み始めましたが、その期待を考慮してもまだお釣りが来るくらい面白かったです。ゴタゴタがあっても結局は「めでたしめでたし」ですんなり終わるのかと思いきや、終盤でも二転三転の予想を裏切るストーリー、主人公を翻弄する親戚一同の破天荒ぶり、祖父の跡継ぎに絡む人間関係の縺れなどに加えて、主人公の淡い恋模様もストーリーに組み込んでいるという憎らしいくらいの演出。本格推理小説としての体裁も十分保っている作りなので、推理小説好きは勿論小説嫌いな人でも楽しめるくらいの出来だと思います。
魅力が多すぎて特に何を書けばいいのかもよく分からないんですが、一番は推理小説という媒体に拘らずに読めるという点でしょうか。この本を読んでSF性を一番と感じる人もいれば、娯楽性を一番と感じる人もいるでしょうが、一番凄いのはそれだけの要素を詰め込んでいながら『詰め込みすぎ』と全く感じさせない事です。例えば主人公の恋模様にしても、終盤までで語られるのはほんの少し、時に思い出したように心理描写で入る程度ですが、終盤においてはある意味一番の意味を持つ要素となります。また同じ日を九回もやり直す過程を文章で読むというと、読者に飽きが来てしまうのではないかという懸念がありますが、この一見意味のなさそうな繰り返し自体にもきちんと作者の仕掛けが施されています。つまり無駄がないのです。
そして無駄ではないと感じさせるのは、やはり文章の構成が巧みだからでしょう。
長々と書いてしまいましたが、自信を持ってお勧め出来る作品となっていますので、偶然このブログを見かけた方は是非読んでみてください。
小説中毒に拍車を掛ける作家をまた見つけてしまいましたね。
島田荘司 『犬坊里美の冒険』 感想
| 犬坊里美の冒険 (光文社文庫) | |
![]() | 光文社 2009-08-06 売り上げランキング : 98805 おすすめ平均 ![]() 島田荘司の司法に対する気持ちが出ているAmazonで詳しく見る by G-Tools |
----あらすじ----
祭り中の神社に現れた腐乱死体が数分後に姿を消す、という世にも奇怪な事件が起こる。容疑者のホームレスは被疑者殺害の事実を認めており、弁護側である犬坊里美たちに対して事件に関する事には黙秘を貫く。容疑者の言動と態度に嫌悪感を抱きながらも、検察側の表明事実に違和感を感じた里美は、同じ司法修習生である芹沢、尾登とともに調査に乗り出す。驚天動地のトリックが炸裂する島田ワールドの最高峰!!
---------------
御手洗シリーズ最強の癒しキャラ、犬坊里美が主役として活躍する本書。御手洗シリーズを最後に読んだのは二年以上も前になるでしょうか。同じく里美が登場する『龍臥邸幻想』ですが、こちらは御手洗不在の中石岡君が事件解決のため奮闘するというお話。この前作である『龍臥邸事件』に初登場した里美は当時高校生。ちょっと抜けた喋り方は九年経った今作でも健在で、彼女のキャラクターとしての魅力だけでもこの本を読む価値はあると思います。真剣に。『27歳にしては痛すぎる..』と批判する人もいるでしょうが、私は好きだからいいんです(爆
事件の方はと言えば、衆人環視の中で現れ数分後に消えた死体、という推理小説好きにとっては興味を惹かれる内容ではありますが、トリック自体は至って地味で、考えながら読めば結構見抜ける人もいると思います。しかしこの本の魅力はそういった推理小説としてのものではなく、冤罪で捕まったにも関わらず刑務所に入る事を望むホームレスを救おうと奮闘する里美の姿と、真相に拘らずただ漠然と現れた事実のみで簡単に片づけてしまう裁判制度の問題点を浮き彫りにしたストーリーにあるのではないでしょうか。真相を明らかにする事が果たして全て正義なのか、と言えば正義という観点がそれぞれである以上結論は出ませんが、少なくとも真相究明のためにひた走る里美の姿には何かを考えさせられます。
ただ最後の最後で犯人が急に「自首します」と言い出すのは頂けない。今まで散々ページ数をかけて語ってきた話があまりにも急速にしぼんでしまったようなイメージ。しかもその後犯人達が出てこないまま終わってしまうので、加害者側の本音も里美の推測でしか語られていない。500ページ以上もあるんだから最後もじっくり語って欲しかった。
ところでこの話は御手洗シリーズではありますが、御手洗潔本人は出てきません。
石岡君もちょろっと出てくるだけで、準レギュラーである松崎レオナが主役を務めた『ハリウッドサーティフィケイト』における御手洗とかなり近しい登場の仕方です。
二階堂黎人×黒田研二 『千年岳の殺人鬼』 感想
| 千年岳の殺人鬼 (光文社文庫) | |
![]() | 光文社 2007-02-08 売り上げランキング : 258086 おすすめ平均 ![]() ちょっと無理があるかな・・・ タイムスリップAmazonで詳しく見る by G-Tools |
----あらすじ----
オーストラリアの日本語学校に通うグループが訪れたのは、奇妙なタイムスリップ現象が噂される千年岳スキー場。彼らはグループ内の人物の企みにより正規のコースを外され、雪山の中で立ち往生してしまう。見つけた山小屋へ非難すると、そこに落ちていた手記にはこれから起こる悲惨な殺人事件の展望が事細かに記されていた。犯人は?ラブホテルで頻発する殺人事件との関連は?協力タッグのキラーエックスシリーズ第二弾!!
-----------------
最近本を読む楽しみが沸々と復活し、休日お決まりのビールも飲まずに読み耽ってしまいました。
一応ネタバレ回避のため行数をあけます。これから読もうと思っている方は詠まないで下さい。
↓
いやあ面白かった。『どの辺がシリーズなんだろう?』と思いながら読んでましたが、なるほどこんな形のシリーズもありですね。嶋山某はおそらく次作にも現れるんでしょうが、その正体が大いに気になります。
前作もそうでしたが叙述トリックがいくつか用意されており、どれも新鮮な驚きを与えてくれ、尚且つ前作ほどの無理がなく良かったと思います。外国人のグループという事で多少疑いつつ読んではいましたが、事件そのものが魅力的で面白かったので深く考える暇もなく結末にたどり着いてしまいました。
話を面白く見せる術も見事ですね。未来の出来事を記す手記に関してはいわゆる普通のトリックが隠されていたわけですが、凄惨な殺人事件に色を付ける見事な小道具です。
第三弾も近い内に読むでしょう。




<破邪顕正>---作者にこそ言いたい
面白い!






